知的障がい者の明日を考える議員連盟 記者会見

-知的障がい者の終の棲家実現に向けた提言へ-

令和元年6月20日、知的障がい者の明日を考える議員連盟は、参議院議員会館にて記者会見を行い、親亡き後の知的障がい者問題(8050問題)の解決に向けた提言を行った。


トピックス

  • 知的障がい者の8050問題の解決に向けて
  • 国際基準と著しく乖離した知的障がい者の定義
  • ブラック自治体・ホワイト自治体の公表を検討
  • 厚生労働省大臣に提言書を提出へ
  • 大川豊の現場視察で更に見えた問題点(視察レポート)

議事録からの抜粋

知的障がい者の8050問題

大川豊(大川興業総裁):今、知的障がい者の終の棲家の問題が問題視されていますが、世間一般でも引きこもりの方の8050問題が生じています。知的障害者施設、知的障がい者の親御さんにおいても同じく8050問題が生じている。(※80歳の親が、50歳の知的障がい者の介護をする。)

例えば、ヨーロッパでは一時期障がい者を「地域に戻す」ということがあったのですが、現実は支援のプロでないとちゃんと支援ができないというのもあり、最終的には入所施設に戻られているのが本当の現状です。今後、日本でも同じようなことが生じると思うのですが、その辺り如何でしょうか?

木村義雄議員(議員連盟会長):今は「在宅」っていう話がでてくるんですが、結局これは財務省の予算措置からくる話なんですよ。施設で生活すると一人月額40万かかってしまうけれど、在宅であれば家族支援は無償だから月10万円以下で済む。だから変なことになる。

でも国が責任をもって障がい者問題に取り組むべきなんです。予算措置もしっかり取り組んで終の棲家の問題を解決する。在宅って言ったって家族や両親が亡くなったり高齢化したら生活できない。

今はあまりにも、入所施設が減りっぱなしで少なすぎる。しっかりと最優先で取り組んでいかなきゃならないと思っています。

柴崎久美子(障がい者の保護者):うちの娘は最重度の知的障がい者なんです。けど、うちの娘を受け入れてくれる入所施設がなく、軽度知的障がい者の方が本来利用するグループホームで無理をいって受け入れてもらっています。

障害者自立支援法が制定されてから、入所施設の数が制限されています。千葉県では県の施設で事件があって入所施設が閉鎖されましたけど、代わりに新しい施設を増やしてくれるわけでもない。

(グループホームで受け入れてもらえる以前)自分が癌になったとき、もし治らなかった場合には娘を置いて迷惑をかけられない。この子を殺さなければいけないというところまで思いつめたんです。そういう思いのしている親御さんはかなりいると思いますので、是非頑張っていただきたいです。

木村義雄議員(議員連盟会長):一番の原因は、自立支援法を作ったときに施設から在宅へという流れにさせられたけど、それが障がい者目線ではなく、財政的な目線で障がい者行政を変えてしまったことに問題があるんです。

今の親御さんの気持ちに応えるべく、取り組みますので、どうぞ期待してください。

国際基準と乖離した知的障がい者の定義

木村義雄議員(議員連盟会長):障がい者の定義というのは、まだまだ不十分であります。先進国で障がい者がと言われる人たちは全人口の2割いると言われています。だから日本でいうと、2500万人位いることになります。しかし、身体障がい者400万人、精神障がい者400万人、知的障がい者100万人とカウントされているのは900万人しかいない。残る1600万人は障がい者として放置されているんです。

特に、知的障がい者においては、まだまだ十分に認定されていないところがある。本当は手を差し伸べなければいけないのに、認定されていなくて手を差し伸べなければならないんじゃないかと。この辺りもしっかりと(定義を)定めて行かなければいけない。

ブラック自治体の公表(行き過ぎたローカルルール)

大川豊(大川興業総裁):ブラック企業が話題になっている中、自治体の運用が上手くいっている、いっていないというのがかなり問題になっています。いわゆる「ブラック自治体」の公表であったり、逆に「ホワイト自治体」の公表とかの情報も欲しいわけです。

ブラック自治体、ホワイト自治体といった皆が情報を共有できるシステムを検討していただけないかと思っています。

提言の中で、各自治体で国の定めた基準を無視するローカルルール運用が蔓延っていること、ローカルルールが原因で障がい者が逆に被害を受けるなどしていることが指摘されたことを受けての質問。

秋元司議員(ワーキングチーム座長):何をもって良い、悪いと判断するのかという問題がありますので、ここは議員連盟として事業所の皆さんの利用状況を細かく精査して、しっかりと取り組んでいないような自治体をブラック自治体とする。そういったことをしっかりと取り組んでい行きたいと思います。同時に、優良事例を各自治体に広げていく、そういう連携もさせていただきたいと思っています。

厚生労働大臣に提言書を提出へ

西村圭史(朝日新聞記者):朝日新聞の西村と言います。この提言書について、厚生省に提出済みでしょうか?

木村義雄議員:厚生省に向けて正規に提出したいと思っています。

西村圭史(朝日新聞記者):提出時期の目途ってありますか?

木村義雄議員:できる限り直ぐに出す予定です。

大川豊(大川興業総裁):提言書の内容ですが、(知的障がい者に対する人権配慮事項に関してなどは)議員立法になっていくのでしょうか?

木村義雄議員:議員立法だとどうしても手続きが簡潔な一方で、政府としての取り組みは非常に弱いんです。だから閣法の中でしっかりと法律改正を行いたいと思っています。それに、この知的障がい者の問題は政府全体として取り組まなければならない問題なんです。

大川豊の現場視察で更に見えた問題点

第1回勉強会以後、大川興業の大川豊氏により勉強会出席した法人等への現場訪問が実施された。現場訪問により更に明らかとなった福祉現場の生の問題をレポートする。

【社会福祉法人 茶の花福祉会】の一例

<問題となった知的障がい者のケース>

自分の弟を2Fから投げて怪我をさせる。女性へのセクハラ行為、包丁を持ってコンビニに入り逮捕。鑑別所、拘留期間が切れるが受け入れ先が見つからない状況。接見に行く。県の事業団だけでなく、経歴によりリスクが高すぎると言われ、受け入れてもらえない。

<法人が行った対応策>

鑑別所へ接見後、受け入れ枠がないため措置入所で一時的な受け入れを行った。しかし、他法人で受け入れ先が見つからないため、数年後には茶の花福祉会の施設入所支援サービスへ変更。

〔2019年7月現在〕

茶の花福祉会を利用される障がい者の方々
高橋満男理事長、白井昭光施設長に現場のお話を伺う

最重度の触法※1の人も受け入れる。スタッフの努力で日常生活が送れる位に回復すると、症状は軽くなったと判断され、施設の収入は減少。勿論、スタッフに対してプラスαになる支給があるわけではない。 スタッフ、施設の人たちのモチベーションは下がり、他の施設でも閉じ込めておく方向に行ってしまう。

※1 刑事責任を問えない人が法律にふれることを、犯罪と区別していう。 

☑自治体、鑑別所や警察署から入所要請が来るが、すでに満杯状態であるため、措置入所の為、回復途中の人たちをグループホームに移さざるを得ない。   

☑待機児童ならぬ待機知的障がい者が山のようにいて、入所施設、グループホームが足りないのが原状。

記者会見現場の動画

記者会見場の写真

資料

議事録[PDF]

> 6月20日記者会見 議事録

当日配布資料[PDF]

> ①記者会見式次第

> ②発表内容 要旨

> ③提言書(議員連盟)

> ④【添付資料1】療育手帳の区分について(REASEより引用)

> ⑤【添付資料2】障害者総合支援法条文(調査権限・罰則)

> ⑥【添付資料3】知的障害者数の比較

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