第10回 知的障がい者の明日を考える議員連盟

-新型コロナ5類移行後に関する厚労省の検討状況等-

令和5年2月22日、自民党国会議員25名により、第10回知的障がい者の明日を考える議員連盟が開催されました。同会では、新型コロナウイルス感染症の5類移行に関する厚生労働省内の検討状況、物価高高騰による事業者及び利用者に対する補填措置、重度知的障がい者の待機問題の報告・要望等が行われました。

※当日配布資料は本記事下部からダウンロードを行っていただけます。

第10回議連の開催状況

1.新型コロナの5類移行に伴う福祉現場への影響

<問題の所在>
現在、新型コロナウイルス感染症対策の一環として、感染者発生時の事業所の人員基準や運営基準に関して、一定の臨時措置が設けられています。当該臨時措置の今後の取扱いについて、厚生労働省から現状の検討状況の報告を行っていただきました。

【参考】新型コロナウイルス感染症に係る障害福祉サービス等事業所の人員基準等の臨時的な取扱いについて(厚生労働省・社会援護局 障害保健福祉部障害福祉課 事務連絡)

出席された厚生労働省の方々

津曲共和(厚労省障害保健福祉部障害福祉課長):新型コロナウイルス感染症の影響によって一時的に人員基準などが満たせなくなる場合がございます。例えば、職員さんが出勤ができないという状況において報酬の減額を行わないという特例。そして利用者の方が感染を心配されまして通所できないという場合がございます。そのような場合に代替施設でのサービスの提供を行うということであるとか、または居宅訪問とか電話による支援を行うというような出来る限りの支援提供を行ったと市町村が認めた場合に通常の介護報酬の算定が可能であるという取扱いを示しているところでございます。このような取扱いに関しましては、現在制度全体において5類に移行していく中、医療面に関しましても医療体制であるとか、全体的な検討は進んでいるところではございます。このような状況、全体的な検討状況を踏まえまして、厚生労働省は障がい福祉など連携してとして、これからの対応をどうしていくかっていうことを考えていかなければならない、これから考えていくような状況でございます。

【備考】「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更に伴う医療提供体制の移行及び公費支援の具体的内容について(令和5年3月17日 厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部 事務連絡)」により、5類移行後の医療提供体制の移行及び公費支援について一定の指針が示された。

司会を担当される青山周平議員(議連 事務局長)

2.重度知的障がい者専用のグループホーム制度の必要性

<問題の所在>
現在、全国で入所施設の待機障がい者数が18,000人を超え、社会的な問題となっています。特に重度知的障がい者においては、支援の困難さからグループホームでの受け入れが拒否される現実があり、国が入所施設を削減していることも相まって、非常に厳しい状況に置かれています。当該状況に関し、厚生労働省の現状認識と対応等について回答をいただきました。

【出典】障害者の入所施設 待機者1万8000人余 背景に「老障介護」か(NHK)

津曲共和(厚生労働省障害保健福祉部障害福祉課 課長):厚労省におきましては、昨年10月から強度行動障がいを有する方の地域支援体制に関する検討会というものを設けまして、強度行動障がいを有する者の地域支援体制について、手厚い支援体制、専門的な体制が必要な方に対する支援体制をどうするかということについて、検討会で検討をしているところでございます。

津曲共和(厚生労働省障害保健福祉部障害福祉課 課長):現状におきましては、サービス事業所での受け入れが困難であるということが非常に多く、支援者の方が疲弊しまして、本人の状態がさらに悪化する。家族にとっても負担になっていく、そのような実情があるという、そのように認識しております。このため、私ども厚労省としてはこのような状況であるとか、社会福祉審議会での報告書でもご指摘がございましたので、強度行動障がいを有する方に対する地域における支援体制というものをしっかりと検討するべく、人材育成の在り方であるとか地域の支援体制、そして支援を行うための評価基準というものについても議論を行っているところでございます。開催状況でございますけども、第1回がスタートしまして、今年度中に取りまとめを行いまして、そして令和5年4月に報酬改定がございますので、そのような議論につなげていきたいと考えております。

長谷川淳二議員(衆議院議員)

長谷川淳二(衆議院議員):愛媛の4区、愛媛県の一番南の方の選出の長谷川淳二と申します。私の地元は地域の支えが大都市に比べたらまだ残っているんですが、それでも知的障がい者の皆様がその地域で住むグループホームが絶対的に不足しています。親御さんも自分が高齢化する中で、やっぱり子供たちが地域で何とか自立して頑張ってほしいという思いがあります。この思いに答えられるような場所がなかなか無い中で、今回さらに重度の方の行き場がない問題が明らかになりました。私たち政治の場でもやはり検討提言をし、また地域の皆さん、地域で頑張っていただくような力になれるように私も力を尽くして参りたいと思います。特にグループホーム関連は、是非とも私は予算の確保、支援に対する強化、重度の方も支援体制の在り方について私も大きく声を大にして訴えさせていただきたいと思います。

3.障がい者虐待とグレーゾーンの問題

津曲共和(厚労省障害保健福祉部障害福祉課長):様々な施設事業所におきまして、障がい者虐待が起こっていることで、当事者の団体の方とか、更なる虐待防止に向けて更なる取り組みを続けて欲しいというような意見が多数出ているところでございます。この障がい者虐待の防止のさらなる推進のために運営基準に以下のようなものを盛り込ませていただいております。

厚生労働省資料より

例えばこの「[見直し後]」という点でございますが、従業者への研修の実施であるとか、虐待防止に向けた委員会を開いていただくとか、責任者を設置していただく。そして虐待の事前防止であるとか、実際そのような事象が起きた場合に、どうしてそのようなことが起こってしまったのかというようなことを施設として組織として議論をしていただきたいということでございます。次の虐待防止研修のスライド(※資料16枚目)で、そういった虐待防止研修でございますけども、障がい特性を理解して適切に支援ができるような知識とか技術を取得するための研修ということで、障がいであるとか精神疾患の正しい理解であるとか、成育歴であるとか特徴をつかんでいただきたいと思っております。

足高慶宣(障がい者福祉研究所代表):障がい者に対して施設職員が故意に叩いたりする行為、これは明らかに虐待であって許されるものではない。厚労省がお示しされるような虐待防止研修とかをしっかりとやって、利用者を守っていく必要がある。

足高慶宣(障がい者福祉研究所代表)

他方で先ほどの(厚労省の)説明だけでは、障がい者が障がい者を叩いたりする、あるいは障がい者が職員に対して他害行為をする、そういう時の緊急避難を具体的にどうするのかがわからない。他者に危害を加えようとする障がい者を職員が制止するために押さえるという行為も、そこだけカットされれば虐待と捉えられる。職員の中では(障がい者からの他害行為で)腕を折られた子とか、頭突きで鼻を折られた子とかがいて、たぶん職員の半分以上が障がい者からの他害行為を経験している。ただ、利用者が悪いとは私も思いません。だって、上手く自分の力や考えをコントロールできないから障がい者手帳をもらって入ってきているわけですから、彼らに責任を問うということはない。ただ、そういう実態を見ながら、具体的にどのように対応すればよいのか。「虐待」という言葉が非常に簡単すぎて、役所はすぐに使ってくれるけども、どこからどこまでが虐待で、どこからどこまでが虐待ではないのか、その点を明確にしてもらわんと。現場にいて曖昧なことばっかり言われても、「そんなことで業務の時間を潰すな」というふうに思われてしまう。虐待の件ではそういう観点からものを見直していただきたい。

4.知的障がい者スポーツの現状報告

全日本知的障がい者スポーツ協会の会長、斎藤利之氏にご出席いただき、知的障がい者スポーツの現状についてご説明をいただきました。

斎藤利之(全日本知的障がい者スポーツ協会会長):先に行われた東京パラリンピックですが、各障がいをクラスに分けて平等に戦わせるという点にその特性があるわけです。539という数字はパラリンピック金メダルの数ですが、そのうちで知的障がい者の金メダルを取れるレースというのはたった21個しかありません。それから選手の数に関して言うと、4400人のアスリートがいます。知的は3競技だけなので参加数が120人、全体の3%です。障がいに応じてカテゴリー化をするということがパラリンピックの特性であるのにも関わらず、結果として(知的障がい者が)出ているのが120人で、一つのカテゴリーしかないんですね。また、ダウン症のカテゴリーっていうのはカテゴライズされていません。ダウン症も含めて知的障がいという人になっているんです。これはヨーロッパの方では結構大きな議論になっておりまして、しっかりそこは分けて参加させるべきだという議論がなされています。

斎藤利之(全日本知的障がい者スポーツ協会会長)

2019年の世界大会、去年11月行われたアジアオセアニア大会の地域大会には私も団長として参加させていただきました。19年の時はダウン症の選手を日本から派遣することができませんでしたが、22年は柔道の選手がダウン症選手として参加することができました。一般的にはダウン症の特性として、筋肉や心臓への障がいがあるというイメージだと思うのですが、世界のダウン症のアスリートは(腹筋が)6パックに割れています。先ほど(障がい児者の)成長というお話がありましたけども、今は医療的なフォローができている中で、知的障がい者のスポーツがかなり進んでおります。国内の全国障がい者スポーツ大会におきまして、ダウン症カテゴリーも創設しようということで議論が始まっております。今後、知的障がい者スポーツ、ダウン症も含めてですね、いろいろバックアップしていきたいと思います。アジア全域の統括として私も頑張っていきますので、また皆さんに情報を提供させていただければと思います。

5.知的障がい児者の成長と教育について

高森雄登(スタジオプレアデス理事長)

高森雄登(スタジオプレアデス理事長):知的障がいの方達って、ちょっと前までは成長が止まっていくと言われていました。けれど最近の研究では知的障がいの方達って伸びる続けるということが証明されてきています。どのように成長をするかというと、永遠に成長を続けるのではなくて、8歳とか9歳程度の壁に向かってじっくり上がり続けていきます。そうすると、支援上難しいと言われる強度行動障がいが、なくなったりするんですよ。子供たちが成長していくとなぜか分からないですけども、それまで問題行動とされていた行動が消えていくんですね。専門的アセスメントができて成長させる環境にあると、子どもたちが成長し続けるので、それまでの気になる行動がなくなってしまうんですよ。そうするとパート職員6人で見ていた子が4人で見れるようになったりするんですよね。是非、知的障がい児者の成長について、詳しい方々に研究していただきたい。もしかしたら、強度行動障がいなどが増えてきているのは、成長させていないという点が潜んでいる可能性が高いかもしれないのです。

野田聖子(議連会長・衆議院議員):障がい児者の成長というのは、私自身も非常に納得するところがあって、うちの子供も知的障がい児なんですけども、やっぱり教育を受けた分だけ変わっていくんだなってわかるんです。ただ、目に見えないからどういうノウハウがあったりだとか、そういうことを教えて欲しいなと思っています。成長という目に見えないものに対して目安というか、何を持って成長と捉えていくのかという点を私たち国会議員も知り得たいなと思います。

野田聖子議員(議連 会長)

6.物価高高騰に対する施設従事者等への補填措置の提言

昨年より続く物価高騰は、福祉業界においても利用者の方々の生活、事業者の運営に深刻な打撃を与えています。議連幹事長の三原じゅん子議員より、物価高高騰に関する提言がなされました。

三原じゅん子(議連幹事長・参議院議員):現在の物価高上昇について、2点提言をさせてください。
1点目は、「施設従事者の賃金への補填措置」ということであります。昨年2月に、政府と厚労省に実施していただいた福祉介護職員処遇改善支援補助金。これは従事者の賃金を月額平均9000円程度上昇していただきました。しかし、物価上昇というのは続いておりまして、このままですと今以上に福祉人材が他業種に流出して障がい者の方へのサービス提供というのが十分に行われなくなるんじゃないかと懸念をしております。国交省も先ほどの賃金5.1%引き上げという話がありました。厚労省もですね、国交省に遅れることなく、施設従事者の方々への更なる賃金補填措置、こうしたものをぜひ検討していただきたい。

三原じゅん子議員(議連 幹事長)

2点目は光熱費等の値上げにより影響を受けてしまう、「グループホーム等の利用されている方々の自己負担金への補填措置」であります。グループホームを利用される方々は食材料費や光熱費を自己負担金として施設側にお支払いしております。現在の物価高、特に光熱費の大幅な上昇というのは自己負担金に直結する死活問題です。現在、各都道府県が主体となりまして、施設側に物価高騰対策支援金を交付することで利用者の自己負担金の負担増を抑えようとしていますけども、都道府県ごとに支給対象となる施設あるいは支給金額が異なっていて、ばらつきが生じています。ですから、利用者の方々がこれからも安心してグループホームなどの施設を利用し続けられるようにですね、利用者の自己負担金額が増加した場合の補填措置、こうしたこともぜひ考えていただきたい
できれば野田会長に、議連からの要望書という形で提出をさせていただけると非常にありがたいと考えております。是非よろしくお願いします。

左・三原じゅん子議員 右・野田聖子議員

7.ご意見等

東国幹(衆議院議員):東国幹と申します。私は、これまで北海道議会議員をやっておりまして、ちょうど10年前になりますが、北海道障がい者条例という条例の策定をしていたメンバーでした。これは三つの柱がございました。まず、豪雪寒冷地であり広域分散型の国土であるということ。そのため、なかなか社会資本がままならない、医療資源も福祉資源もままならないということで、それをカバーするために条例の中で相談窓口の設置。そして2本目に潜在的にある差別の解消。そして、生活しづらさの解消。この3本を柱とする条例を作成したのか10年前でございました。

東国幹議員

しかしご承知のとおり、まだまだ障がい者福祉というのは解決できていないのが現実であります。そういった地域地域の課題があるかと思いますけども、多くのこの関係者の皆様方と様々な知見をいただき、しっかり進めていきたいと思いますので、今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

高村正大(衆議院議員):山口県の高村正大です。先日地元で福祉団体の方々との意見交換会というのもさせていただきました。その中で本当に物価高に色々なものが追いつかなかったりとか、実は厚労省がしっかりお金を作ってるものの都道府県の一般財源に勝手に使われちゃってそれが施設のために使われてないとか、いろんな問題が出てきました。

高村正大議員

資料


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